第32章 侑end
お互いしばらく無言が続き、そろそろ帰った方が良いかな…と視線を彷徨わせると、、
コーヒーの良い香りが部屋に広がった。
佐久早「コーヒー淹れたけど、砂糖とかミルク無いんだけど良い?」
マグマカップを両手に持ち、一つを私に差し出してくれた。
「・・え?ありがとうございます、大丈夫です。」
佐久早選手はパソコンデスクにマグカップを置きマスクを外すと椅子に腰を下ろした。
もう少し、居ても良いって事かな…?
佐久早選手は感情が読みづらいし、言葉が少ないけど、きっと優しい人なんだろな…。
「頂きます」と呟き、コーヒーにくちをつける。
「美味しい…」
強ばっていた心と身体が自然と解れていき、口元が緩んだ。
佐久早「・・俺は面倒事に巻き込まれるのは常々避けて生きてる。」
佐久早選手は手の中にあるカップに視線を落とし、静かに話し始めた。
マスクを外したせいか、落ち着きのある声が心地良く耳に届く。