第9章 文化祭
「ともみちゃんみっけ!」
「・・・治君?」
ニッと笑う治君は、ドラキュラにしては爽やかな笑みを浮かべているが、血に見せかけた赤いペイントが口の周りに塗られていて何だか少し不気味な感じだ。
私の隣では佐々木さんが目をハートにして治君を見つめている。
治「ともみちゃん探しててん。クラス行ってもおらへんし、ウロウロしとったらそこで1位の原さんがおったって話してるの聞いて追いかけてきたわ。」
「今その話はちょっと…」
治「ハハッ、暫定トップやのに浮かない表情やな。まぁともみちゃんらしいけど。
てか俺、昼まで時間空いてるんやけど、一緒に回らへん?」
「あ、いいけど友達も一緒、、」
佐々木「いやいや!私、実行委員の仕事あるし戻らなあかんから!2人で回って⁇」
佐々木さんは、どーぞどーぞと私を治君に押し付けると、じゃ‼︎と手を振り走り去ってしまった。
走り去る佐々木さんの後ろ姿を見て、そう言えば私と治君の事、勘違いしてたんだ。と思い出すが、すでに本人は人混みに紛れて消えてしまっていた。
治「ほな行こか?」
自然と手を握る治君に私は驚き目を見開く。
「ちょ、治君!手、、」
治「?ええやん。人多いしはぐれてまうで?」
さも当たり前の様に話す治君。
でも周りにいる人達は私達を見て何か話している。
「あれ宮治やない?ドラキュラの仮装とかめっちゃかっこいいな‼︎」
「ホンマやー!てか隣の子ってミスで今1位の子やろ?あの2人って付き合うとるんかな?」
私は手を離すよう治君に目で合図をする。
「治君はただでさえ目立ってるんです!手なんて繋いで回ったら大変な事になりますよ!」
治「俺は気にせんで?堂々としてたらええやん。てかこのままお互い1位やったら後夜祭で踊らなあかんねんで?」
う、、と困った顔をする私を見て意味深な笑みを浮かべる治君は手を恋人繋ぎに繋ぎ直すとスタスタと歩き出した。
手を離そうとしてみるも、ガッチリ繋がれていてとても離してくれそうにない。
肩を落とし諦めた私の顔を見て治君は楽しそうに笑っている。
「・・もう、笑い事じゃないのに…。」
治「ハハッ、なんか校内デートみたいでドキドキするわ!」
無邪気な笑顔を見せるドラキュラに、少しの間なら良いか、とつい許してしまった。