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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



―おまけ③―
幸せの残り香篇
※帰蝶の過去にほんのり触れる描写があります。帰蝶本編未読の方はご注意下さい。

安土城へ家族旅行土産を渡しに行ってから早七日以上が過ぎた。現代へ誕生日祝いの旅行に向かう為、数日間の非番を獲得した光秀はその余波ともいうべきか、休暇明け早々から多忙な毎日を送っている。近隣諸国への視察や城内外での政務など、彼が信長の目指す天下布武の道へと携わっている部分は非常に多い。安土だけでなく、彼の領地となっている近江坂本や丹波、そして元柏田領であった国々からもひっきりなしに様々な報告が届くとあって、最近は家族と光秀の間ですれ違い生活が続いていた。

(今日は安土付近の農村を視察に行くって書き置きにあったよね。日帰り出来るとは八瀬さんから聞いてるけど、夜遅い予定って言ってたしなあ……身体壊さないか心配……)

ちなみに本日の凪は非番である。そんな訳で朝から様々な家事に励んでいるのだが、ふとした瞬間に思い浮かぶのは日々多忙を極めている夫の事だ。九兵衛や光忠が行動を共にしているとあり、一切食事や休息を摂らないという事はさすがにないと思っているが、それでも心配なものは心配である。凪や息子達が寝入った後に帰宅し、起床する頃には出掛けてしまっている、そんな生活サイクルだ。まともに顔すら見れていない日々は、体調面に関する懸念だけでなく、寂しさも同時に連れて来る。

(……駄目駄目!臣くん鴇くんだってお父さんに会えないの我慢してるんだし。光秀さんが居ない間、私がお母さんとして二人の寂しさを紛らわせてあげなくちゃ!)

翳りそうになる心を奮い立たせ、凪が意識を切り替えた。現在、光鴇は同い年位の子供達が集まる学問所へ行っている最中だ。そして兄の光臣はそれを迎えに出向いてくれている。二人の息子達が帰宅する前に、八つ刻用の甘味でも作ろうと、凪はこうして御殿の厨に立っているのであった。

「よし、後はこれを油で揚げて、満遍なく甜菜糖(てんさいとう)をまぶせば完成かな!」

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