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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



ともかく、土産を喜んでもらえた事について凪が安堵していると、不意に光鴇が思い出した様子で声を上げた。

「あ!ときもひでよしにおみやげ、ある!」
「鴇くんからのお土産……?」
「光鴇からもあるのか。一体どんなものか楽しみだな」
「ふふん!ちょっとまってて」

自分も秀吉相手に土産がある、と言い出した幼子に対し、凪が軽く首を捻る。子供がわざわざ自分の為に用意してくれた事実だけでも十分嬉しいと、面持ちを綻ばせる秀吉へ得意げな表情を見せた光鴇が一度胡座の中から立ち上がった。そのまま父の元へ向かい、幼子が光秀の傍らにある土産を包んでいた包みを指す。

「ちちうえ、あれちょうだい?」
「ああ、あれか」

(えっ!?光秀さんは鴇くんのお土産知ってるの?)

しっかり意思の疎通が取れている光秀と光鴇を見て、凪が内心驚いた。既に土産を配り終えたとあって包みの中にはさしてものなど入っているとは思っていなかったのだが、どうやら違ったらしい。するりと開いた布の中から、白い筒状のものが見えた。細めの麻紐で括られているそれを父から受け取り、光鴇が秀吉の元まで駆けて行く。ゆらゆらとご機嫌に揺れる黒く長いポニーテールを見て、兄がはっとした様子で目を丸くし、隣に座る父の顔を見上げる。

「ち、父上……あれはまさか……」
「臣くん急にどうし……あっ、も、もしかして……!?」
「おやおや、察しのいい妻と息子だな」

驚き半分呆れ半分といった様子の光臣を見て、凪が怪訝に首を捻る。やがて何事かに気付いた様子の彼女が同じく光秀を振り仰ぎ、黒々した眸を丸まると瞠った。そんな妻子の反応を、実に面白そうな様子で流し見た男が胸前で腕を緩く組みつつ、口角を持ち上げる。その笑みにもはや含みしかない事を感じ取り、凪と光臣が心配そうに秀吉と幼子のやり取りを見守った。

「ひでよし、これ!」
「ああ、ありがとう。開けてみてもいいか?」
「いいよ!」

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