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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



凪と光秀、二人から改まった様子で礼を告げられ、秀吉が穏やかに笑みを浮かべる。口では光秀の為ではない、と言いながらもその実、彼がどのような心境で公務の調整をかけてくれたのかは、よく分かっていた。骨の髄までお人好しだな、と光秀が心にもない憎まれ口を叩くのも、それ等をすべて把握しているからに他ならない。

「ひでよし、みて。とき、ちちうえにこんぺいとのふくろ、かってもらった」
「いい色の反物だな。失くさないよう気を付けるんだぞ。それから、金平糖の食べ過ぎも身体によくない。一日三粒ずつなら、その分長く食べられる」
「さんつぶ、すくない……」

ぱたぱたと秀吉の傍へ駆けて行った光鴇が袴の結び目に括り付けられている、水色に様々な色合いの柄が入ったちりめんの巾着を見せた。軽く揺れる度にかさ、かさと微かな音を立てているそれは、旅行二泊目の晩に光鴇がねだった金平糖専用巾着である。ワームホールが開く前に、近くの店で兄と色違いで買ってもらったものだ。中に入っているものは、現代で購入した色とりどり、味も様々な金平糖である。(ちなみに信長への土産のひとつとしても同じものを買った)一日三粒、という現状に打ちひしがれた光鴇が眉尻を下げる中、凪が土産の入った包みの中から箱を取り出した。

「秀吉さん、これ向こうのお土産です。気に入ってもらえるといいんだけど……」
「わざわざありがとな。開けてもいいか?」
「勿論どうぞ」
「ひでよし、おひざのる」

凪から受け取った箱を嬉しそうに見て、秀吉が明るく笑う。包みを開けようとしたところで、胡座をかく男へむんずと近寄った幼子が、その間にすっぽりと収まった。そうして腰に下げた巾着を開け、空色の金平糖を一粒取り出すと、それをかりっと食べる。

「こら鴇、秀吉さんの邪魔になるだろう」
「むっ……とき、おひざすき。あにうえいじわる」
「意地悪とかそういう問題じゃないんだが……」
「光臣、大丈夫だ。胡座の中に座ってる間は、光鴇も大人しいからな」

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