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第5章 掌中の珠 後編
───おまけ②───
その名もパンダ篇
本能寺跡石碑前で開いたワームホールにより、無事乱世へと戻って来た明智家+佐助は、途中まで帰路を共にした後で別れて安土へと帰還した。到着した日は既に夕刻を回っていた為、登城は明日にするという光秀に従い、家族旅行in五百年後の思い出をそれぞれ噛み締めながらその夜は眠りに就いたのである。そして、その翌日。一家はそれぞれ荷物を手に、やや久々となる安土城へと登城したのだった。
「女中さんや下働きの人達、お土産喜んでくれて良かったですね」
「ああ、見た事のない菓子だと、皆口々に言っていたな」
「こちらであのようにふわふわしたものは中々食べられません。試食を頂いた時は驚きました」
「ときもふわふわ、たべたい!」
信長は既に大阪へ拠点を移している為、この安土城を預かっているのは事実上左右の腕である秀吉と光秀だ。といっても割りと高頻度で大阪城へも行き来する為、信長や大阪城勤めの者達への土産は後日光秀が持っていく事になっている。日頃世話になっている安土城の女中や下働きの者へも個包装の菓子ひとつずつにはなってしまうが、現代から土産を買って来ていた。本当は生八ツ橋でも買っていきたかったのだが、生憎と生物という事もあり、今回は極力日持ちする焼き菓子系で揃えたのである。
「御殿の家臣さん達に配って余ったものがあるから、帰ったら食べよっか」
「わーい!とき、ふわふわすき」
「確かばあむくーへんといいましたか。あの味だと、父上が点てた茶とよく合いそうですね」
土産として大量購入して来たのは、抹茶味のバームクーヘンである。手頃な大きさで個包装になっている上、まだ生八ツ橋よりは消費期限も長め、且つ乱世の人々が体感した事のないふわふわしっとり食感、という事でそれを選んだ。土産コーナーで試食を勧められた子供達が、一口食べて感動のあまり眸をきらきらと輝かせていたのは記憶にまだ新しい。