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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「あにうえ、ちちうえとははうえ、なかよしでよかったね!」
「ああ………まあ仲が良くない事の方が逆に珍しいくらいだしな」

伊達に彼方から万年新婚と言われるだけの事はある。仕方なさそうに苦笑した光臣が瞼をゆるりと伏せ、肩を竦めた。光臣自身としても、まあ両親は仲が良い方がいい。そうでないと逆に心配で夜も眠れなくなりそうだ。

「じゃあときもちゅってするから、こんぺいとのふくろ、ほしい」
「あくまでも金平糖用の巾着にこだわるのか。別に構わないが」
「鴇くん、信長様と一緒で金平糖好きだもんね。じゃあ明日、ワームホールが開く前に何処かお店寄って買おっか」

そんな中、口付けすれば特別、という認識で落ち着いた光鴇が父の胡座の中で軽く駄々をこねた。その程度の我儘など光秀にとって可愛いものだが、そんなに金平糖用の巾着が欲しいとは驚きである。子供とは未だ解明し難い謎を数多秘めた生き物らしい。ワームホールが開くのは明日の正午だ。それまでに少し時間がある為、そこで巾着を買う事を凪が提案すると、幼子が嬉しそうに声を上げた。

「わーい!!あにうえにもこんぺいとのふくろ、かってね!」
「え、俺は別に金平糖用の巾着は要らないんだが……」
「まあ遠慮するな。お前も鴇と揃いで菓子の巾着を腰にでも下げるといい」
「絶対嫌です」
「え、なにそれ可愛い……」
「母上の可愛いの基準が時々よく分かりません……」

特別の中の特別、その意味を幼子が知るのはまだ当分先の事だ。揶揄めいた調子で光臣へ投げかける光秀が、そっと凪の膝上にある手を取って、するりと優しく指を絡める。この意地悪で確信犯で、けれどとても優しく暖かい人の特別になれた、その幸せを噛み締めて凪は嬉しそうにはにかみ、光秀と絡んだ指先にきゅっと力を込めたのだった。





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