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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



片手を持ち上げ、結っていない幼子の黒髪を梳く。母によく似たそれは指通りが良く、するりと手から溢れた。特別、と耳にした光鴇の眉根がますます顰められる中で男が悠然と、けれど何処か穏やかに笑みを浮かべる。父が発した言葉の意味が上手く理解出来ず、子供が不思議そうに首を傾げた。

「ちがうとくべつってなかよしってこと?」
「ああ、俺と母の仲が悪い方がいいというなら、話は別だが」
「!!ちちうえとははうえ、なかよしじゃないと、や!」

笑みを浮かべながら告げた光秀のそれに、光鴇がはっとした様子で眸を瞠り、短く息を呑んだ。そうして首を大きく横に振りながら否定する。必死な子供の様を前に、大きな掌で頭をひと撫でした後、光秀が不意に凪を呼んだ。

「凪」
「はい?」

突如として話を振られ、軽く双眸を瞠った凪が返事をする。金色の眼が流され、近付くようにと促されている事を察した彼女が、そっと膝を静かに擦って光秀へ身を寄せた。その瞬間、光鴇を撫でていた片手を伸ばして顎をすくい、彼女の唇を優しく奪う。

「!!!?」

子供達が見ている目の前で、触れるだけとはいえ思い切り口付けされた凪がぎょっと猫目を丸くした。光臣、光鴇もそれぞれ脈絡がなさ過ぎる父の行動にぽかんとしている。そんな三者三様の反応を見せる中、柔らかな唇を軽く啄んでからそれを離した。当然凪の顔は言うまでもなく、真っ赤に染まっている。

「み、光秀さん……!!?」
「そう照れる事もないだろう。何せお前は俺の特別な最愛だからな」
「うっ………またそうやってずるい事ばっかり……!」

愛おしげに、けれども仄かな意地の悪さを滲ませた様で光秀が眸を眇めた。鼓膜を揺らす甘い言葉の数々に胸が忙しなく鼓動を打ち鳴らし、あちこちに熱が集まる。父と母のやり取りを暫し澄んだ無垢な眸で見つめていた光鴇は、兄の方を振り返って笑顔を浮かべた。

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