❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
「ときもとんぼだま、くるくるしていっぱいがんばった!」
「光秀さんが、喜んでくれたから」
もう何年も共に居れば分かる。光秀がどんな想いで家族からの贈り物を受け取ってくれたのか。今どんな気持ちでいるのか、それこそ手に取るように。手にしていた竹灯籠の表面を光秀が優しく撫でた。そうして凪や光臣、光鴇へ視線を合わせて穏やかに笑みを浮かべる。
「これ以上にない贈り物だ。ありがとう」
「じゃあ、来年はこれを越える贈り物をしなければなりませんね」
「とき、らいねんもちちうえのおくりものつくるの、がんばる!」
光秀の礼を耳にし、光臣が笑顔で言い切った。光鴇もそれに乗っかり、小さな拳をえいと上げて意気揚々と宣言する。傍に居る男の表情に安らぎと幸福の色を見て、凪の胸がじんわりと暖かくなった。
(幸せな誕生日だな。光秀さんもきっと……ううん、絶対そう思ってくれてる筈。だって、こんなに優しい顔してるんだから)
はしゃぐ子供達を優しく見守る光秀の、着流しの袖を軽く引いた。陽だまりの色を湛えた凪の大好きな双眸が自身へ流され、そのまま緩く首を傾げられる。さらりと銀糸が揺れて、促された。やがて華が咲き誇るような笑顔と共に、祝いの言葉を紡いだ。
「来年も、その先もずっと皆でお祝いさせてくださいね」
不確定な未来の約束は交わさないと決め、それを覆してからもう随分経った。この身で幸せを享受してはいけないのだと思っていた事もあった。だが、こうして多くを受け入れてから数多のものに気付く事が出来、そして得る事が出来た。来年もその先も、いつか死が別つときまで、得難い幸福を大切に噛み締めていく。それを赦して、それを望んでくれる者達が居る限り、ずっと。
「……ああ」