❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
桔梗や空木、狐らしきものや猫に栗鼠、竹を細工の形に細かくくり抜き、中が見えるような仕様へ光秀が物珍しそうに眸を瞬かせた。
「手作り竹灯籠です。ろうそくとか燭台の上にそれを被せると、模様が透けて光るんですよ」
「父上の文机へ置けるような大きさに調整しました」
「とき、きつねさんとかねこさんとかほった!」
体験工房で作る事の出来る竹灯籠は本来、内部にLEDライトを入れるのだが、乱世に電気はない。よって直径を広めの形に取り、中に燭台などを入れる形にしたのだ。ろうそくの明かりなどでは試運転していないが、LEDライトではかなり綺麗に模様が浮き出て幻想的に見えていた為、恐らく光源の少ない乱世では尚際立つ事だろう。模様は全員でそれぞれ掘った。歪な動物は案の定光鴇が母と共に掘ったらしく、線が歪んでいる辺りが味わい深い。
「そうか。では向こうへ戻り次第、早速使うとしよう」
「何だか光秀さんのお部屋、一気に可愛い感じになりそうですね」
「みてみて、ここにもとんぼだま、いれた。ときつくったの!」
「良い色をしている。これだけのものを作るのは、骨が折れただろう」
光秀の自室に様々な模様が描かれた竹灯籠が置かれた様を想像し、凪がつい可笑しそうにくすくすと笑った。細かく掘った模様の他にも、手作りのとんぼ玉がところどころ埋め込まれている。内側からの明かりでとんぼ玉の色合いが変化して見えるだろうという、凪の案だ。自慢げな幼子の頭をひと撫でし、光秀が三人へ労いがこもった柔らかな眼差しを注ぐ。
確かに彫刻刀で竹を掘るのは一苦労だったし、子供達が手を怪我したりしないかと懸念もあった。だが、三人で光秀の喜ぶ顔を想像しながら作っていた瞬間は、それ等を凌駕する程充実していたのも事実なのだ。
「初めての事だったから確かにちょっと大変でしたけど、でも頑張った甲斐は十分ありました」
「そうですね、こうして五百年後の世へ訪れたからこそ出来る贈り物だったと思います」