• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「もう、中身の予想ついてるくせに」
「父上をはぐらかす事の方が難易度高いですからね……」
「とき、ちゃんとひみつ、まもった」

袋を凪が光秀に見せると、見覚えのあり過ぎるそれに男が揶揄めいた事を述べた。勘の良い光秀の事だ。凪達がどう足掻こうとも、隠し事が容易に出来る程隙がある相手ではそもそもない。苦笑する光臣に続いて、光鴇が自信満々に胸を張る。口周りと鼻の頭は、父によってすっかりきれいにされていた。

「じゃあまずこれ、鴇くんから渡してくれる?」
「うん、いいよ!」

紙袋から掌に収まる程度の箱を取り出し、光鴇へ渡す。今年の誕生日祝いの贈り物はふたつだ。よって子供達それぞれから光秀へ渡してもらおうという凪の考えである。もうひとつの箱は光鴇に渡したものよりも大きい為、光臣へと託す。父の膝上に乗りながら光鴇が笑顔で振り返り、それを父に両手で渡した。

「これ、ははうえとあにうえとときから、ちちうえにおくりもの」
「ありがとう、開けてもいいか」
「きっと喜んでもらえると思います。ね、臣くん」
「はい、自分で言うのもなんですが、今年も中々の力作ですよ」
「それは楽しみだな」

真っ白な包装紙に包まれたそれには、銀色のリボンが巻かれていた。幼子から箱を受け取り、光秀が礼を言う。乱世で用意するものとは訳が違うそれに自信を覗かせて凪が光臣へ話を振った。少年もまた笑顔で肯定すると、光秀が手元へ穏やかな視線を送る。そうして、丁寧な仕草でリボンを解き、包装紙を開けた。真っ白な箱が中から現れ、それを開封する。

「これは……」

厚紙で作られた台紙に収まっていたのは、房飾りであった。真っ白なそれの上には連なったとんぼ玉が三つ飾りとなっている。光秀が普段身にまとう白着物に合わせて作られたであろうそれの先端には腰の組紐へ括り付ける為の紐がついていて、初めて凪が自らに贈り物をしてくれた時の事を思い出した。

/ 800ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp