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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



皿へケーキをそれぞれ置き、シルバーのフォークを渡す。ケーキは三層で、スポンジの間にはたっぷりの生クリームとイチゴが挟まっている。ふわふわと弾力のあるスポンジを包む真っ白な生クリームの上に幾つも咲いた水色桔梗のチョコが程良いアクセントになっていた。

「おはな、おててでたべる」
「花からいくとは豪快だな、仔栗鼠」
「鴇の場合、花より団子でしょうしね」
「あむっ」

チョコレートで出来た水色桔梗を手にし、それを光鴇が思い切り頬張った。胡座の中でご満悦な幼子を見て、光秀が頭をぽん、と撫でる。見た目の美しさを楽しむよりも、光鴇くらいの年頃であれば食い気の方に興味がいくのも当然だ。ぱり、と小気味良い音を立てて水色桔梗のチョコレートを食べると、幼子が嬉しそうに破顔した。

「おいしい!ちちうえも、おはなあーん」
「やれやれ」

小さな手で花をもうひとつ摘み、振り返りながら父の口元へ近付けた。光鴇の気遣いを無碍にするなど出来る筈もなく、光秀がそれを食べる。ぱり、と親子揃って同じ音を立て、甘い水色桔梗を味わった。光臣もフォークを手にしてスポンジを器用に一口大に切る。ふわっとした弾力が物珍しく、口に運ぶとその柔らかさや甘さに眸が輝いた。

「臣くん、美味しい?」
「はい、ふわふわで柔らかいですね…!美味しいです」
「ときもふわふわ、たべるっ」

兄弟が初めて食べるケーキに感動している中、凪も一口大にしたそれを食べる。ふわふわのスポンジは久しく味わっていない感触であり、甘すぎず後味がさっぱりとした生クリームは少し酸味のあるイチゴとのバランスが絶妙だ。そこに水色桔梗のチョコレートが加わり、贅沢で極上の味わいが広がる。

(んー!美味しい!スポンジふわふわ、クリームもくどくなくていい感じ!甘いもの苦手な人でも食べられそう)

幸せそうに味わい噛みしめる凪の様子を見て、光秀が微笑ましそうに眸を眇めた。

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