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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



一方の光臣は、先程から延々とテレビに夢中だ。果たして何を観ているのかと凪が意識をディスプレイの方へ向けると、右斜上にあるロゴに【徹底解説!残された日本の名城とその攻略法】と書かれているものが映り込む。

「このてれびとやらは凄いですね。各所の城をここまで調べ尽くしているとは……優秀な斥候がいるのでしょうか。勉強になります」
「今後の城攻めに役立ちそうだ。先程の熊本城は中々に興味深い。戻ったら職人を呼び寄せ、坂本城の守備を改めるとしよう」

(凄く実用的に番組観てる……!)

現代ではどうやら戦国時代ブームらしく、それにまつわる番組が多く放送されているらしい。日本に残る名城の外観から経路、施されている仕掛けなどを徹底解説する番組らしいが、現役武将の目から見ればかなり有益な情報なのだろう。光鴇のお絵描きを眺めつつ、光秀も光臣に倣ってしっかり紹介されている城の造りを頭に叩き込んでいるようであった。

(一番観せちゃいけない人に観られちゃった感があるなあ……)

あの明智光秀に城内の設備を把握されたとあっては、その城は恐らく終わりである。内心でそっと苦笑を漏らした凪が肩を竦めると、一度時計を確認した。時刻は十九時半過ぎ、もう三十分もすれば、光鴇も眠くなってしまう頃合いだろう。

(そろそろケーキとかの準備しようかな。可哀想だけど、お絵描きは一旦中止させないと)

相変わらずご機嫌な様子でお絵描きに勤しんでいる光鴇を見ると、凪がその横に近付いて手元を覗き込む。先程木登りに失敗したパンダのひでよしを描いていた幼子は、その更に横に今度はペンギンのまさむねといえやすらしきものを描いているようだった。構図的にはどう考えても仲が良さそうに見えず、いえやすがまさむね相手にメンチを切っているようにしか感じられない。

「鴇くん、そろそろお絵描きは終わりにしよっか。お片付けしよ?」
「むっ……とき、まだおえかき、したい」

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