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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



凪が疑問に思って首を傾げると、幼子が必死に指を組むようにして水鉄砲を撃とうとしていた。川遊びの折に子供達に凪が教えた為、二人共認知自体はあるが、光鴇の小さな手では中々上手く撃つ事が出来ない。兄の指摘にあからさまに不機嫌な風を見せ、頬をむくれさせながら必死に空気を送り込む。

「ほら、こうやってやるんだ」
「むむっ……あにうえだけずるい」

光臣がお手本とばかりに水鉄砲を撃ってみせた。なだらかな放物線を描いて撃ち付けられたそれを前に、幼子が不服を露わに文句を述べる。すっかりご機嫌斜めになってしまった子供を目にし、光秀がくすりと小さく笑った。

「鴇はまだ手が小さいからな。水鉄砲より直接湯をかけた方が早そうだ」
「小さいお手々でも頑張れば出来ると思うけど、確かにそうかも」

空気を含ませる空間が小さい為、上手くやらないと水は飛ばないだろう。極論とも言えるそれに苦笑を零すと、凪が子供を慰めるように付け加えた。自身の小さな紅葉の両手をじっと見つめ、光鴇が眉根を寄せる。そうして兄のそれと見比べた後、再びぷくっと頬を膨らませた。

「とき、おててちいさい。あにうえおおきい、ずるい」
「それはお前より年上だから当然の事だ。父上の方がもっと大きいぞ」
「ちちうえもずるい」
「やれやれ、とんだとばっちりを受けたものだ」

不服そうな色を帯びた幼子の大きな猫目を向けられ、光秀が軽く肩を竦める。そうして湯の中で繋いでいた凪の片手をそっと離し、両手で水鉄砲の形を作ると湯を高く飛ばした。勢いのついたそれが綺麗な放物線を描き、そのまま正面側にいた光臣の顔面を直撃する。

「ぐっ……!!?」

湯に浸かってまったりと油断していたのか、普段ならば軽く避けられるそれをもろに顔面へ食らい、光臣が短く呻いた。

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