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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



てっきり湯帷子を着て入浴する事が当たり前だと思っていた光秀や光臣が、驚いた様子で似通った双眸をそれぞれ丸くする。片眉を持ち上げて感心した風に男が感想を漏らす中、光鴇の脱ぎ終えた服を綺麗に畳み終えた凪を見て、慌てた兄が問いかけて来た。

「で、では母上は一体どのような格好で……!?よもや裸だと仰ったりはしないですよね!?」
「それは俺としても看過出来ないな」
「みんなはやくぬいでゆあみ、しよ!」

返答次第によっては、といった雰囲気を滲ませている光臣の傍で、光秀が冗談なのか本気なのかいまいち分かりにくい事を神妙に言う。既に露天風呂へ向かう気満々の光鴇がとんとん、とその場で軽く跳ねて主張するのを、凪がよしよしと優しく撫でた。そうして傍らに置いてある真っ白なバスタオルを手にしてそれを見せる。

「私はこれ巻くから大丈夫!ある意味湯帷子よりも心強いから」

意気揚々と言ってのけた彼女に対し、光秀と光臣が不思議そうに凪の手にある真っ白なバスタオルを見る。果たしてどのようにそれを着用するのか、などという疑問がありありと透けて見えるような二人を前に、凪は小さく笑ったのだった。



衣服を脱いで腰に手拭いを巻いた後、光秀と光臣が部屋の外へ備え付けられている露天風呂へと足を踏み入れた。ちなみに凪はまだ着替え途中である為、先に行って欲しいと半ば追い出された訳だが。初めて見る大きな浴槽に大興奮の光鴇が、一番手前にある檜の浴槽へとよじ登ってざぱん!と勢い良く入った。

大人であれば座っても問題ない深さだが、光鴇程の背では深過ぎる。ちょうど首から上が出るくらいのそこへ飛び込んだとあって、一度頭まですっぽり沈んだのを見やり、光秀が子供の脇下に両手を差し入れ、抱き上げてやった。

「すごーい!おおきい!ふかい!ぶくぶくぶくっ……」
「躊躇いなく湯に沈めるとは見上げた度胸だな」
「それ褒めるべきところでしょうか、父上……」

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