【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
だけど、そんな状態では休まらない気がして途端にサムさんの身が心配になった。
「どうかしたか?」
バッキーに声をかけられてハッとする。
トン、と眉間に人差し指を当てられた。
「シワが寄ってるぞ」
『うん…気が休まらないの、大変だなって思って…。もしかしてバッキーも?』
同僚と言うくらいだからバッキーもきっとキャプテン・アメリカであるサムさんと一緒に行動することだってあるだろう。職務内容が同じであれば、バッキーだって気が休まらないのでは。
しかしバッキーは少し考えた後、「割とそうでも無い」と言った。
「家に戻れば君の気の抜ける顔が見れるからな」
良い笑顔で褒められた気がした。気がしたけど気の抜ける顔って褒め言葉なのだろうか??
「月曜日のお茶会だって良い時間だ」
「月曜日のお茶会?」
サムさんが片眉を上げる。
『夜にアパートの屋上でシートを広げてお茶会をするんです』
そう答えるとサムさんは「あんたがそれに参加してるのか?」と言わんばかりの顔をしてバッキーを見ていた。
「ただの隣人にしては仲が良すぎないか?」
『わたしもここまで仲良くしてくれる隣人さんは初めてです』
サムさん公認の仲良しさんになれたのは本当に嬉しい。
あのバッキーが自分より年下の女性とお茶会だって?
しかも何だ。彼女に向ける目は鳥肌が立つくらい優しいぞ。
俺だってつい最近あの険しい目付きをされなくなってきたくらいなのに、如何にもともと女性には紳士的で軟派とはいえこんなに変わるものか。
以前、軽く話には聞いていたが実際に会ってみて、今まで接したことがあまりないタイプの女性だということはわかった。
バッキーが選ぶ相手にしては幼く感じるし、可愛らしい雰囲気はあるが、失礼な話、別段誰もが惹かれるような顔立ちでもない。
『ごめんなさい、待たせてしまってますよね』
急遽、ケーキをふたつも食べることになった彼女が食べ終わっている俺と、コーヒーしか手元にないバッキーを見て慌てたように忙しなく口を押さえながらモグモグと口を動かしていた。