【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
サムさんの分のバーガーは出来次第、席に運んでくれるとの事だったので代金を支払い、オペラとガトーショコラだけ自分達で席に運ぶ。
席に戻ると、サムさんと写真を撮ってる人物が変わっていた。
わたし達が席を外した後も対応し続けていたらしい。
邪魔をしないように静かに座り、バッキーと席をくっつける。
少しバッキーと近すぎる気もするけど、サムさんと写真を撮ってる人の邪魔にならないようにするためにはこの方がいい。
コーヒーもちょうどいい温度に冷めてて飲みやすい。
『こっちも食べる?』
わたしの前に置いたオペラを指すと、バッキーの口がパカッと開いた。
『…?』
バッキーの手元のガトーショコラに置いてあるフォークを差し出そうとすると、そもそもフォークが置かれてなかった。
『…フォーク取ってこようか?』
口を開けたままのバッキーに問いかけても返事はなく、かわりにわたしの左腕が掴まれた。……行かなくていいってこと?
『このフォーク使う?』
フォークを差し出すと、バッキーの口が閉じられた。
「待ってたのに」
『何を?』
ぶすくれるバッキーに首を傾げると、一通りの撮影会が終わったのか、サムさんが笑った。
「食べさせてほしかったんだろ」
『え?!』
その言葉に驚いて再度バッキーを見ると、サムさんに言われたのがバツが悪いように渋い顔をしていた。
『言ってくれたら良かったのに』
左腕が動かせない状態でやりづらいけど、右手でオペラにフォークを刺す。
『はい』
それをバッキーの口元に持っていく。
バッキーは驚いた顔をしていたけど、そのまま口を開けたのでオペラを口に運ぶ。
『おいしい?』
「ん」
バッキーが頷いたのを見て、今度は自分の分を口に運ぶ。
その間、サムさんが静かだったのが気になってそちらを見ると、サムさんも口をパクパクしていた。
サムさんも欲しいのかな?
「…このやりとりは普通なのか?」
『??』
何が?と思っているとずっとあった掴まれている感覚が消えた。
掴んでいた本人は何事もなかったかのようにコーヒーを飲んでいた。
『フォーク、やっぱりもう一本必要じゃない?食べにくいでしょ?』