【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
「あんたが隣人か」
『?そうですけど…』
アパートにはわたしたちしか住んでない上に、部屋の位置も階段を挟んだ向かい合わせではなく、正真正銘の隣り合わせ。正しく隣人だ。
「なるほど…名──」
何かを言いかけている途中でバッキーの玄関の扉が開いた。
「何しに来た?」
出てきたバッキーは不機嫌そうに眉を眉間に寄せていた。
ちらりとわたしの姿を確認すると、眉間にシワを作っていたのが嘘のように口元に笑みを浮かべて「Hi」と挨拶をしてくれる。それに手を上げて応えるとバッキーの視線は黒人さんに戻った。
「何しに来たってのは友人に対してあんまりじゃないか?」
「友人?俺とお前が?」
「共通の友人がいる関係だけか?もう友人だろ?」
肩をすくめる黒人さんの言葉にバッキーはフン、と鼻を鳴らすがその顔は満更でもなさそう。
険悪ムードになったらどうしようかと思っていたけど、そんな心配はなさそう……。
何故バッキーに「じいさん」と呼びかけていたかは分からないけど、わたしの出る幕はないみたいだし…と扉を閉めようとしたら黒人さんに呼び止められた。
「なあ!あんたも行かないか?」
わたしに呼びかける彼をバッキーが「おい、」と止めようとする。
『どこにですか?』
「そこら辺のカフェにでも一緒にどうだ?友達の友達は友達って言うだろ?」
「気にするな。今日も仕事だろ?少しでも休んでた方が良い」
バッキーが黒人さんを押しのけてわたしに近づいてくる。
『……行っちゃダメ?』
何か都合が悪いのかと思い首を傾げて言うと、バッキーは口をパクパクさせてから「…いや…大丈夫だ…」と何かを諦めたかのように、笑顔を取り繕った。
『じゃあ、ちよっと着替えてきていいですか?』
バッキーの後ろでこちらの様子を伺っていた彼に声をかけると「ああ。ゆっくりどうぞ」と気のいい返事をして貰えた。
ミアが部屋に引っ込み、着替えに行った。
「どういうつもりだ?何か任務でも?」
「言ったろ?友人として来たんだ」
サムの言葉に思わず「は?」と顔をしかめる。