【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
「…なんでさっきのホステスが知ってないなら良いんだ?」
真っ直ぐに見つめられる。
真剣な眼差しで。
『う〜ん…なんて言うんだろう…』
このモヤモヤは。
バッキーとケリーさんが良い雰囲気に見えた時の胸騒ぎも多分関係してる……
多分これは
『多分バッキーが取られたと思ったの…かも?』
「へえ?」
『バッキーが他の人と喋ってるの見たことなかったから…あ、電話以外でね。なんて言うんだろ。わたし今、割とバッキーと仲良いと思ってるのね?』
「ほう」
『そんなわたしより、初めて会ったであろうケリーさんがわたしより先にバッキーのわたしが知らない理由を知ったってなると、なんかこう……悔しい?』
う〜ん、と自分でも天を仰ぐ。
多分この、わたしが感じているこのモヤモヤはそんな感じだと思うんだけど…。
「……」
バッキーは何とも言えない顔をしていた。
顔がニヤつくのを抑えるような、残念そうな、何とも言えない顔。
『あ!!』
「あ?」
『友達が転校生の方に行っちゃった、みたいな!!』
あ、凄く分かりやすく呆れた顔した。
『分かりやすく言うとそんな感じ!はあ〜〜スッキリした』
とりあえずモヤモヤを言葉で明確にできた気がするぞ。
微かに、隅の方で片付けきれていないモヤモヤがある気もするけど、今はこれで充分。
「友達な」
2人で階段を軋ませながら上がると、バッキーが呟いた。
自分の部屋の前に着いてから振り返る。
「俺たちは友達か?」
スウ、と少し目を細めて片方だけ口角を上げるバッキー。
『さっきのは例えだけど…隣人で、友達、かも?』
同じような表情を意識して言ってみる。
ふむ。我ながら良い響きかも。
わたしたちは隣人で、友達。
友達の安否は気になるものだし、友達とお茶会はするし、相手の勤め先がお客として行ける場所ならば遊びに行くことだってあるだろう。
正しくわたしたちは友達じゃないかな?
「…友達と手を繋ぐ?」
『う〜ん…繋ぐんじゃない…?大人になってから友達と言える人がいたことないからわかんないけど』