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【MARVEL】This is my selfishness

第5章 5th





手袋を取って触れたミアの手は小さかった。
冷えた指先に自分の体温が移るように包み込む。
左手は義手だから右手で。


ワカンダ製のこの左腕はどんな状況下でも稼働できるように冷えすぎることも無く、熱くなりすぎることもない。
ただ表面温度は多少冷える。その手でミアの冷えた手を触る気にはならなかった。
だから体温のある右手で…。










ミアが言うケリーという女は、ロンバルドに用があるらしいミアを待ってる間に俺に声をかけてきた。


ミアと違い、ホステスをしてるだけあって見た目が華やかで色気のある女だった。




「Hi…あの子の知り合いなの?」


男の扱い方が分かっているかのような目の使い方をする。



「ああ。隣人でな」

「ふぅ〜ん…」



まるで値踏みをするように眺められる。

その視線を受けながら懐かしさを感じた​───────昔の俺であればこの視線の誘いを受けていたのだろう。
しかし今の俺には何の魅力も感じられなかった。




「あの子を待っているのかしら?」

「そうだ。帰るアパートは同じだからな」

「へえ…隣人ってだけなのに律儀な人ね」

「律儀って訳じゃないが…」



髭をさする手に彼女の視線が移った。




「この時期に手袋をしているの?」

「いつもしている」

「いつも?何故?」




まあ、そう来るだろうなと思った。
ただその質問でミアが頭に浮かぶ。

彼女には手袋をしている理由を聞かれたことがなかった。
それが俺には少し、助かっていた。
手袋をしている理由は決して人に明かしやすいような理由とは言いきれないから。
そんな理由を聞いてこないミアに気兼ねしなくていいと感じていた。






「冷え性対策だ」


そう答えると彼女は少し驚いたような顔をして「意外な理由ね」と笑う。



一拍あけて彼女が言う。


「待つのをやめてこれから私と一緒に来ない?」




昔であれば甘美な誘いも今では何の甘みも感じない。



「素敵な誘いだがそれは俺じゃない奴にしてくれ」


にこやかに返した時、背後から扉が開いた音がして同時に待ち人の声が小さく聞こえた。






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