【MARVEL】This is my selfishness
第5章 5th
アパートへの帰路につきながら口を開く。
『ケリーさんと知り合い?』
ちらりと横を伺う。
「いや?ミアを待ってたら声をかけられただけだ」
…ケリーさんは何を思ってバッキーに声をかけたんだろう…。
2人は何を話したんだろう
バッキーはケリーさんにどんな印章を抱いたんだろう
出来れば聞きたいけど、そこまで根掘り葉掘り聞くのも変かな?
「どうした?」
『え?あ、…知り合いって訳じゃないなら何話してたのかな〜って…』
言ってしまった…誤魔化せばいいものを…いやでも積極的に聞いたわけじゃないし、何とも思われない…はず…
わたしの問いにバッキーは気にした様子もなく、「大した話はしてないな。手袋をしてる理由を聞かれたくらいだ」と答えた。
『手袋をしてる理由?』
考えたこともなかった。
いつも手袋をしてるのは当たり前になっていたし、手袋をしてないのを初めて見た時に義手を知っただけで、手袋をしている理由までは聞いたことがなかった。
ケリーさんは教えて貰えたのかな。
わたしも教えて貰えるのかな。
『…理由って?』
「冷え性対策」
『……ふふ』
割と意を決したのに、意外な言葉が返ってきて、つい笑ってしまった。
バッキーが冷え性だったとは。
「ちなみに嘘だ」
『え?それは…ケリーさんにそう言ったっていうのが?それとも冷え性対策っていうこと自体が?』
「冷え性対策自体が」
なんで?と首を傾げると、バッキーが立ち止まり、右手の手袋を外した。
その手をわたしに差し出してくる。
なんだろう、と思いながら眺めていると差し出されていた手がわたしの手を取った。
『あったかい…』
「冷え性なんて無縁なんだ。代謝が良くてな……君の手こそ冷たいな」
きゅ、とわたしの手を片手で温めるように包まれた。
『わたしこそ冷え性なの』
「そうか」と答えながらバッキーはわたしの手を握ったまま歩き出した。
手…手を…繋いだままなんですけど……
普通に手を繋がれている……繋がれているわたしの手は握り返していいものかと強く握れないでいる。少し、触れるくらいの力でしか握れないでいる。