【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
「あー…いや、あれは俺のじゃない」
『え』
口を突き出して視線を外すバッキー。ん?なにか言いづらいこと?
「任務先から借りてきた」
『あ、じゃあ軍のってこと?』
「いや」
『違うの?』
「誰のかは知らない」
……それって
『盗難s───』
「借りただけだ」
借りただけって!
その場にあったのを盗んできちゃったようなものじゃない???そしたらあれは盗難届けが出されてあっという間に盗難車になるってことじゃない???
『えっ、どうするの、帰りは押して帰るってこと?』
もうお酒飲んじゃってるから帰りは乗って帰っちゃダメだし、わたしもそうならないようにバッキーが乗ろうとしたら止めなくては。
「置いて帰る。誰かが回収するだろ」
バッキーは何も気にしてないようで、さらっとそんなことを言ってグラスに口をつける。
『誰かに連絡しとくとかはしなくていいの?』
「ああ。どうせあれはもとより盗難車だ」
いや、結局盗難車なんかい!と突っ込みそうになった。突っ込んでよかったのかな。
その後もちびちびと呑んでいたけれど、だんだんトイレに行きたくなってくる。ほんと、お酒って飲んだらトイレが近くなるよね。
『ちょっとトイレ行ってくるね』
変わらずバッキーはわたしを囲うように立っているから、少し体を反転させるようにして解放してもらおうと右手で彼の左腕を叩いて合図する。
「じゃあ、」と言いながらわたしを解放するのではなくリードして行こうとする。
『1人で行けるから。多分あっちだよね』
「俺も行く」
『バッキーもトイレ?』
「…ああ」
ふむ。バッキーもトイレ行くならわざわざ別れていくこともないか。
一緒にトイレの方へ行くと、そのスペースにも人がたくさんいて、みんなすごく密着している。フロアにいる人たちよりも男女の密着度が高い。その様子は以前仕事の帰りに外でイチャついていたカップルさんたちのようで。
そこまで考えると、あの時の外でそういう行為を致していたことまで思い出す。このスペースにいる人たちも今にも始めそうな雰囲気に見えてくる。