【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
階段を降りた先の扉を開くといろんな音に包まれた。
音楽もそうだけど、その音楽に負けないように話す人の声や、バーカウンターでバーテンダーさんがお酒を準備する音。
フロアの方ではステージにいるDJが流す曲に合わせて踊っている人もいるし、それを壁側に避けて見ながらお喋りしてる人たちもいる。
バーカウンターには何席か椅子もあるけれど、ほとんどの人がカウンターに沿って立ったまま飲んでいたり、はたまた壁際に用意された背の高い立ち飲み用のテーブルの所で飲んでいたりと、皆それぞれ楽しんでいるようだった。
『すごい、、』
わたしの呟きを聞き取ろうとわたしの腰を抱くバッキーがより体を寄せて耳を傾けてくれる。
内緒話をするように手を壁代わりに声の通り道を作ってもう一度、今度はバッキーに向けて『すごいね』と言うと聞こえたようで頷いてくれる。
バッキーはわたしと違って手で壁を作ったりせず、わたしの耳に直接話しかける近さで「先になにか飲むか?」と言う。ち、近い…!あとくすぐったい…!
きっと真っ赤になっているであろう顔をウンウンと縦に振ると、そのままバーカウンターに誘導される。
席が空いてないため、空いたスペースに2人立ち並ぶ。
初めての場所なのにバッキーは慣れた様子でお酒を頼み、わたしに「甘いやつ?」と聞いてからわたしの分まで注文してくれる。
わたし一人だったらいつまでも注文できなかったかもしれない、と思うほどお酒の注文が至る所から殺到していた。
お酒を待ってる間、振り返ってダンスフロアを眺める。
しっかり体を動かして踊っている人もいれば、少し体を揺らす程度の人もいる。けれど総じて感じたのは、男女の距離が近いこと。あそこもあそこもどこもかしこも。
どの女性もセクシーに感じる。自分があそこに混ざれる気がしない。まったくしない。
しかし。しかしだよ。せっかく来たのだからあそこにも飛び込んでみたい。
ホラー映画と一緒。怖いもの見たさでってやつ。
だってわたしには鬼に金棒なセキュリティーマンのバッキーがいるんだから。怖いものは無い!