【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
何だろう。ずっと不機嫌?
やっぱり似合ってないのかな。それとも自分は疲れてるのにって思ってるのかな。
『…似合ってない?可愛くない?』
スカートを捲っていた手はバッキーに握られたままだった。ムスッと下を向いている彼の視界に入るように覗き込んでみる。
すると揺れた瞳がわたしと目を合わせてくれる。
「似合ってる。可愛い」
そう言われた瞬間、体の熱がもう血を沸騰させるんじゃないかと思うほどに上がっていく。
やった、嬉しい、ありがとうと続けようとしたのにバッキーの言葉に先を越される。
「だから駄目だ」
『ん?』
「駄目だ、こんな格好で中に入ったら」
『え、何で?』
似合ってて可愛いならいいじゃない。こちとらケリーさんのお墨付きですよ。確かにずっとTバックで全く守られてないおしりが冷えきってますけど。
「危険だ」
駄目だ駄目だとキリがないので握られたままの手をわたしからも強く握って『いざゆかん!』とお店に入るための階段へと引っ張った。うん、動かない。体幹すごい。揺るぎすらしなかった。わたしの腕が取れたかと思った。
『もう。この服、ケリーさんが選んでくれたの。プレゼントてくれたの。わたしのために。わたしが初めてクラブに行くから。わたし今とてもお店に入るの楽しみにしてるの』
「……」
『今、中に入らせてくれないならわたし、バッキーがいない時に1人でクラブに行く』
その言葉を聞くと、バッキーの雰囲気が変わった。
ザワザワとまるで毛を逆立てる猫のように。
先程のお兄さんたちを威圧したほどでは無いけれど、それに近い威圧感を纏わせたまま、ムスッとしたままようやく歩き出してくれた。
おお……。
並ぶようにわたしの腰を抱きながら階段を降りる最中も「絶対に俺から離れるな」「1人で行動するな」「誰かに声を掛けられても無視をしろ。いや、俺が話しかけさせない」と呪文のように繰り返していた。そんなにわたし信用ないの???