【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
バッキーとの電話を切って、つけていたテレビを消す。
戸締りをして、身だしなみを整える。
ケリーさんが選んでくれた服。普段はしない露出の高い服。
デコルテだって大きく見えてるし、足だってタイツもレギンスも履いてなくて丸見えの丸見せって感じ。
パーティーのときのちょっぴりセクシーなドレスも普段のわたしだったら選ばないものだったけれど、バッキーは綺麗だって言ってくれた。
この服のこともいいね、似合ってるねって言ってくれるかな。
きっと彼は紳士だから言ってくれるだろうな。
例え似合ってなくても、わたしを褒めてくれるはず。でもそれって喜んでいいもの?
いや、どうだろう。
彼は本当にいつも褒めてくれる。それを前に『いつも褒めてくれるね』って言ったらわたしには褒めたくなることがいっぱいみたいだから、みたいなことを言ってくれていた。
だからきっと、彼の言葉は紳士だからってだけじゃなくて、本当に本心で言ってくれている。
そんな気がする。
そう縋りたいだけかもしれないけど。
よし、とスースーする足に力を入れて、気合を入れる。
たとえバッキーに褒めてもらえなくても、わたしがこの服を、この格好を好きであれば何も問題は無い。
だって服はわたしの気分を上げるものだから。
誰に何と言われようと。
ただちょっぴり、好きな人に「可愛い」って言われたいだけ。ちょっぴりだから、もし言われなくてもわたしは大丈夫!
エントランスのドアを開けて身震いした。
え、寒。
薄手でも暖かいはずのタートルネックのニットセーターはデコルテ部分のせいで風が入り込んでくる。
タイツもレギンスも履いていない足は言わずもがな。スコートにだって風は入るのである(当たり前)。
ものすごく寒いわけじゃないけれど、寒くない訳じゃないので自然と足早に歩く。
念の為、スマホでお店の位置を確認しつつ、かといってスマホに集中しすぎないようにちゃんと周りを見ながら早歩きで行くと、思ったよりも早く着いた。