【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
〈Hi〉
『Hi!お疲れさま、バッキー』
〈ああ、ありがとう。今から家に向かうんだが〉
向かうんだが、と言っている後ろが何やらザーザーと音がしている。
まるで風が吹いてるような、もしくは風を切っているような……
『もしかしてもう向かってる?』
〈バレたか〉
悪戯がバレたとでも言うように笑うバッキーに顔が綻ぶ。
『ねぇ、せっかくだからお店で合流しない?』
この場合のお店というのはもちろん今日行く予定のクラブのことである。
『バッキーが一度家に戻らなきゃいけない理由があるなら別にいいんだけど…』
〈だけど?〉
『…いつもどこか行くのに部屋の前で待ち合わせてるでしょう?その…たまには別の場所で待ち合わせしてみたいなって思って…』
〈……〉
うっ、黙っちゃった、、
そう、わたしは気付いたのだ。
わたしたちはいつも玄関前で、さあ行くかと出発しているため、【友達と待ち合わせてお出掛け】という感じでは無いのである。
ケリーさんと待ち合わせした時にそういえば、と気付いた。アレックスの時は事が事だったのでそれどころじゃなかったけれど。
『だめ?』
返事がないのでダメ押しで聞いてみる。
〈…もう夜だぞ?1人歩きは危ないだろ〉
『そういう時のために催涙スプレー買ったんだよ。それ持って行くし、HEAVENから帰ってくる時間より早いし、歩いてかかる時間は一緒だよ』
〈それでも〉と否定が来そうだったのでかぶせ気味に懇願してみる。
『バッキー、お願い』
今日だけ、と付け加える。
少し考えるような間のあと、渋々というのがとても分かる声音で〈今日だけだぞ〉と言ってくれた。
『やった、ありがとう!』
お礼を言うと〈できるだけ明るい道を通ること〉〈人通りが多いところ、けど人に近すぎない距離で歩くこと〉と注意事項を言われた。さすがセキュリティーマン。
それに対してちゃんと返事をするとまだ心配そうな声であと15分ほどあればお店に着きそうだということを教えてくれた。
じゃあわたしもあと少ししたら家を出よう。