【MARVEL】This is my selfishness
第14章 12th
『……わかった。でも本当に無理になったら言ってね?』
「ああ。終わり次第連絡する」
そう言って繋がれていた手が解けていく────それをすんでのところで今度はわたしが握る。
「?」
『お見送り、させて』
ランドリー室に行くから、とバッグを見せるとバッキーは嬉しそうに目を細めて頷いてくれた。
手を繋いだままでいたいけど、残念ながら鍵を持っている手だったから離さなきゃいけなかった。
けれど鍵を閉めてランドリーバッグにポイと入れたら、それまで見守っていてくれた彼がまたわたしの手を取り、繋いでくれる。
『!』
まさかまた繋ぎ直してくれるとは思っていなかったから、驚いてバッキーの顔を見上げると、「ダメか?」とでも言うように眉尻を下げて顔色を伺うように首を傾げるものだから、わたしは言葉の代わりにその繋がれた手に握り返すように力を込めた。
階段を降りて、エントランスまでの短い時間。
少しでもわたしの運か何かが彼に渡せればいいと祈りながらぎゅう、と手に力を込める。無事に怪我なく帰って来れますように。
「行ってくる」
『行ってらっしゃい。気をつけてね』
名残惜しそうに離れていく手を引き止めないように。
ここで今生の別れのように振舞ってしまうと本当にそうなってしまうんじゃないかと。
だからできるだけ元気に明るく。
わたしを安心させるように、ニッ!と口角を上げて彼は手を振りながらエントランスドアを出て行った。
どうか今日も彼が無事に帰って来れますように。
信者でもないのにわたしは神様に祈った。
「なんだ、今日は一段と不機嫌だな」
合流したサムが言う。
「いや、でもちょっと嬉しそうな気もするな」
バッキーの顔をジロジロと眺めながら分析するサムをバッキーは無視して服を着替える。
今日は戻り次第、ミアとクラブに行くのだ。汚れた格好では帰れない。
「すぐに終わらせる」
「やけに張り切ってるな」
「言っただろ。約束がある」
「ああ、ミアか」