【MARVEL】This is my selfishness
第13章 11th
「ミアちゃん、言ってたオススメのクラブ、リスト送ったから気になることがあったら言ってちょうだい」
音符がついていそうな調子でロンさんが言う。
咄嗟にスマホを確認しそうになったが、仕事中のため我慢。
『ありがとうございます。あとでバッキーと見てみますね』
クラブに行ってみたいという話をロンさんにすると、最初は止められた。
けれどバッキーも一緒だと話すと「それなら…」と教えてくれた。
「確実に安全であるなら何事も経験よね」と会員制ではないけれど比較的治安がいいクラブをいくつかリストアップしてくれることになった。
「ミアちゃん、お客さんも少ないし、カウンターで食べてもいいわよん」
「あいつと一緒に食べな」
ロンさんとルドルフさんの計らいで、賄い料理をカウンターで食べていいことになった。
休憩中であることをわかりやすくするためにパーカーだけ上から着て、カウンターへ向かう。
『ルドルフさんから一緒に食べてって』
バッキーの横によいしょ、と座りながらお皿を2つ置く。ひとつはわたしへの賄い料理、もうひとつはバッキーと一緒に食べる賄い料理。こちらはご飯というよりおつまみみたい。
「珍しいな。こっちで食べるのか?」
『うん。ロンさんがいいよって』
そう言ってロンさんを見るとウィンクを返してくれた。
『ん、そうだ。ロンさんがおすすめのクラブ、リストにしてくれたんだよ』
スマホを二人の間に置いて、バッキーにも画面が見えるようにする。
すると、そう簡単には位置を変えれない重ための椅子がズレた。
え?と横を見るとバッキーの顔が、距離が、さっきより近い。
わたしが座っている椅子がズレたのは、バッキーがわたしごと椅子を近付けたからだと気付いた。
途端に心臓が忙しなくなる。
けれど気付かれないように、気にしてない風を装いながら『あのね、』と話を続けると、今度はバッキーの腕が腰に回った。もうだめだ。