【MARVEL】This is my selfishness
第13章 11th
ロンさんは「それにいつもより遅いだけで遅刻じゃないわよ」と言ってホールへ戻って行った。
ロッカーへ荷物を置きに行ったミアとわかれて店内を隅々見て回る。
その途中であの男と会う。
「あ、おはようございます、バーンズさん」
「……ああ」
アレックス。
ミアにウィンターソルジャーについて事細かに話した男。
しかしミアに話した割には俺への態度を変えない。まるで自分は何も知らないとでも言うように。
詰めるか、放っておくか。
放っておいたところでミアが俺にもあの日話したということを隠して置ける気もしない。隠すつもりがあるかもわからないが。
ならば俺から話しても問題ないだろう。
「…俺の事、知ってるらしいな」
その言葉に一瞬とぼけた顔をしたが、次にはもう表情を変えていた。
まるで人懐っこい奴のように。
「ミアから聞きましたか……そりゃそうですよね、同じアパートに住んでるんだし、仲良いし……」
言いながら俯いていく顔。男の頭頂部まで見えてくるところまで下がったかと思うと、突然俺の手を掴む。
そして勢いよく顔を上げた。
「僕、ウィンターソルジャーのファンなんです!!!」
そう言った瞬間には距離を詰めてきていた。
その距離感と言葉に顔が引きつる。
「初めて見た時からもしかして、とは思ってたんですけどこの間の───」
「どうやって調べた?」
アレックスの言葉の途中で投げかける。
「どうって……普通にネットで…」
困惑したように答えるアレックスにより圧をかける。
「俺のことは報道規制が敷かれてる。ネットのサイトの類も同じだ」
「あ〜…確かに僕が見たサイトはどれも今はもう見れないです」
その表情は残念そうだった。
嘘か本当かはっきり見分けれたらいいが、確実性はない。確証もない。
「…じゃあサイトのURLだけ教えてくれ」
「見れないですよ?」
「それでもいい」
「わかりました」
アレックスは「憧れの人と連絡先交換できるなんて」とワクワクした様子でスマホを取り出した。