【MARVEL】This is my selfishness
第13章 11th
階段を降りきって、ダニエルさんをランドリー室へ招く。オーナーであるダニエルさんに対して『招く』という言葉が正しいのかは分からないけど。
あらかじめ、ポットに水を入れてきたからコンセントを挿してボタンを押せばすぐにお湯が沸き上がる。
『コーヒーでも紅茶でもお好きにどうぞ。あと業者さんの分も持ってきたので、休憩のときにでもぜひ』
甘いものもお好きだったら、とマグカップに入れていたクッキーやチョコレートをそれぞれに分ける。
「うわぁ、めちゃくちゃ気が利く…ミアちゃん良い奥さんになりそう!」
ダニエルさんは「ね!」とバッキーに同意を求める。するとバッキーもこくり、と頷くものだから気恥ずかしくて目を逸らした。
まだ作業を続ける業者さんの方へダニエルさんが「持ってきてくれたから」と声を掛けると、業者さんがわたしたちの方へお礼を言ってくれた。
お礼を言われたいがためにしたことではなくても、やっぱりありがとうって言い合えるのは良いな。
『じゃあ、わたしはこれで、』とその場から抜けようとすると、ダニエルさんが「あとでそれぞれの部屋にオートロックと繋がるインターホン設置しに行くからそのつもりで!」と言っていた。それに対して『分かりました』と返す。
バッキーも部屋に戻るかと思ったけれど、設置作業を見ときたいのかその場に残るようだった。そういう作業、見てるの楽しいよね、と心の中で同意してわたしだけ部屋へと戻った。
「バッキー・バーンズさんとミアちゃんって、ほんと仲良いんだね」
ミアが部屋に戻るのを見届け、ランドリー室とエントランスを分ける壁に寄りかかるとダニエルが話しかけてきた。
「…そうか?」
「うん。さっき降りて来る時も仲良さそうだな〜って思ってたんだけどさ、今もミアちゃんが部屋に入るまでずっと見てたし」
そう言いながら、ダニエルは「あ、」と何か思い当たったような顔をする。
「仲良いってかバッキー・バーンズさん、ミアちゃんのことs───────ごめんなさい」
バッキーの目つきに気づいたダニエルは言葉の途中で押し黙った。これ以上口にしては良くない目に遭いそうだと本能的に感じ取った。