【MARVEL】This is my selfishness
第13章 11th
『ぇ、っとね、ダニエルさんたちがお茶できるようにいろいろ持っていこうと思ってて…運ぶの、手伝ってもらえる?』
色気に殴られた頭を頑張って回転させた。
危うく何もかも忘れて部屋に退散するところだった。
わたしの言葉を受けて、バッキーは「了解」と言うと、掴んでいたわたしの腕を離して、扉を開けっ放しにして1度部屋へと引っ込んでいく。
ホッ、とうるさくなっていた心臓を落ち着かせて、わたしもわたしで自分の部屋へ入ろうと扉を開けようとすると、途中で扉がものすごく軽くなった。
後ろ斜め上を見上げるようにして振り返ると、バッキーが立っている。
どうやらシャツを着てきたらしく、わたしへの視界の暴力は少なくなっていた(彼が素敵すぎるので完全には無くならない)。
「ん?」
わたしがぼんやりしているのが分かるのか、どうした?と彼が顔を傾げる。『なんでもない、』と返して部屋の中へ入る。
なんでもないことにしなくては。まだ自分で告白する決意も振られる覚悟もできていないのにこの気持ちを悟られるなんて絶対に嫌だ。
この気持ちを知られたらわたしが知らないうちに何かを終わらされてしまうんじゃないかって怖い。
だからわたしは今まで通りに接しないと…。
『バッキーはじゃあ、ポットとコーヒー持てる?え?紅茶も持てるの?』
ポットを片手で持ったバッキーはコーヒーの瓶を渡すとそれを器用にもう片方の手の指三本で持つようにして、紅茶の箱も載せろと訴えてきた。
『お菓子はマグカップに入れてくからわたしも片手空くよ?』
「鍵閉めれないだろ」
『いや、さすがにこの距離は鍵いらなくない?』
「いる」
『過保護だなあ…お父さんでもそんなに言わなかったよ』
その言葉にバッキーの体はフリーズした。
【お父さん】
いや、別にお父さんという単語が出ただけで自分のことを父親として見てるというわけじゃない。じゃないはずだ。
数日前、ピザの料金の話をしている途中でミアは席を立ち電話をしに行った。
急だったこともあり、気になって扉越しに話してる内容が聞こえないかと玄関扉に聞き耳を立てた。