【MARVEL】This is my selfishness
第12章 10th
仕方ないし、その考えも分からなくは無い。やったことは消えない。
しかし、ミアにはそう考えて欲しくない。
俺は俺だと思って欲しい。
ミアにとって危険な奴だと思われたくない。
冷酷で残忍なウィンターソルジャーと本質が同じだと思われたくない。
避けて欲しくない。怖がられたくない。
彼女はそんな俺の気持ちを知っているかのように、願いが届いたかのように俺を避けることも怖がることもしなかった。
ウィンターソルジャーの時と違う義手とはいえ、義手である左手を握りしめてくれた。
義手であることを知り、『綺麗』と呟いた時よりも強く、しっかりと。
同時に胸が締め付けられるようだった。
その衝動に突き動かされるように、危うくキスするところだった。
受け入れにくい事実を包み込んでくれた彼女が美しすぎて、惹き込まれるように。
彼女とは、スティーブがペギー・カーターに感じたように、そうありたかったように、共に生きたい。その場限りではなく、偽りの俺ではなく、ありのままのバッキー・バーンズとして。
だがまだ自分自身がこの罪との向き合い方が分からないまま、納得いっていないまま、ミアと共に生きるのは違う気がする。
自分が求める平穏のことを考えるとこれでいい気がするのに、同時に頭を過ぎる罪の数々がそれを妨げる。
「俺はいつになったら─────」
『今日は紅茶だよ』
陽が沈み、星々の姿が分かりやすくなった頃。
わたしとバッキーは久しぶりに2人で屋上にいた。
お茶会自体久しぶりな気がする。天気が崩れなくて良かった。
紅茶を淹れてバッキーに手渡し、これも食べて、と数種類のクッキーを広げる。
「ありがとう」
『どういたしまして』
お茶会のために必要なものはわたしが用意する。バッキーは招待された身だから何も準備しなくていいんだけれど、呼びに行ったら枕片手に出てきた。
寝転ぶだろ?と。その片手にあるクッションもとい枕はわたしがあげたもの。
それを受けてわたしも自分の枕を取りに戻った。確かに寝転びたい。