【MARVEL】This is my selfishness
第12章 10th
「君はそういうことは言わないんだな。なんて言えばいいか分からないって正直に言ってくれる」
『気の利くこと、言えたらいいんだけど…わたしはそんなに言葉選びが上手い方じゃないし……何も知らなかったわたしが仕方がないって言ってしまうのは何か違う気がして。思わないわけじゃないの。でもそれで気分が晴れていたら、バッキーはそんなつらそうな顔してないんじゃないかなって』
「そう見えるか?」
『うん…。つらそうだし、痛そう。失われた時間は戻ってこない。失われたままだよね。でもまだ失われていない時間をどう生きるかっていうのも難しい話だよね』
罪の意識を抱えたまま、これからを生きる。その道だって多分簡単なものじゃない。
バッキーみたいに向き合おうとしているのなら尚更。
彼の眉間に寄るシワを空いてる手でグリグリと伸ばす。
「本当に怖くないのか?」
『…怖くない、んだと思う。人が死んだのを見たことはあっても死ぬ瞬間だとか、殺される瞬間をわたしは見たことがないから……わたしを助けてくれるあなたを見たことはあるけど、誰かを殺すところを見てないから、実感がないんだと思う」
本人が話していてもまだ完全にはバッキーとウィンターソルジャーが重なっていない。
不謹慎かもしれないけど、髪の長いバッキーもかっこよかったな、と思ってしまう始末。これは口に出さないでおこう。
重い話のはずなのに、わたしの頭は真剣に捉えてないのか?ということまで考え始めてしまう。良くない。
『怖がった方がいい?』
そう聞くと、彼は一瞬固まってから笑った。
「ミアには怖がられたくない」
絡んだ指がわたしの指を弄ぶように動く。
上目遣いのように視線を寄越されれば、胸がきゅう、と鳴る気がした。
わたしに、怖がられたくない。
他の人じゃなくて、わたしに。
ああ、にやけてしまいそう。
空気が少し軽くなってきた。
真面目な話はおしまい。
今日はもうお互いに今までした事の無い話をして、頭が痛くなってしまいそう。むしろ泣いたからもうだいぶ前から頭が痛い。