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【MARVEL】This is my selfishness

第12章 10th



『話してくれてありがとう』

「いや、話すのが遅くなって悪かった」

『ううん。話さないでわたしと距離を置くっていう選択肢もあったと思うの。それでも話してくれたことが嬉しい…ありがとう』

「……俺は君に救われてる。俺も、君に出会えてよかった」


真面目な話はもうおしまいって思ったのに。
空気が軽くなったと思ったのに、今度は見つめてくる彼から目を話せなくなる。
少し灰色が混じる水色の瞳。明るい所で見ると水色が強くなる。
アレックスが見せてくれたウィンターソルジャーであった時の彼の瞳も同じ色をしていた。髪の色もそう。違うのは雰囲気と人格だろうか。


バッキーの右手が頬を撫で、親指がわたしの下唇を撫でる。
キス、される……?




そう思った瞬間、甘い空気を引き裂くように音が鳴った。


『ッ、!』


聞こえているはずなのに、驚いてソファーの上で跳ねたわたしとは違ってバッキーはまだわたしを見ていた。手も変わらず。


『え、いや、あの、バッキー?電話、鳴ってるんじゃない…?』


鳴っている音はケータイの呼出音だ。わたしのスマホの音とは違う。ということはバッキーのケータイのはずだけど、当の本人は気にしていない。
しかしわたしが指摘すると明らかに面倒くさそうに溜息を漏らしながら、ようやくケータイを取りだし電話に出た。


電話に出ながらソファから立ち上がり、わたしから離れたところで電話相手と話し始めたバッキー。出来るだけ聞かないように、聞き耳を立てないように反対方向を向いて縮こまる。
まあ、そんなことをしなくてもわたしの今の頭の中はさっきまでの出来事でいっぱいだ。

バッキーが触れたくないであろう話をしてしまって、傷つけてしまったと思った。でも彼はちゃんと向き合ってくれて、話をしてくれた。
彼のタイミングで話してくれていたかもしれないことをフライングしてしまう形になったのはすごく申し訳ないけど……。



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