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【MARVEL】This is my selfishness

第12章 10th



恩赦されたからといって、彼の中からその記憶が消え去ることは無い。それが故に罪の意識が彼を蝕む。
しかし、その記憶を消すなんてことは赦されないのだろう。
洗脳されていたから罪はゼロ、なんて綺麗事は世間的にも許されないのだろう。だって、殺された人達がどんな人達であろうと被害者だし、遺族がいる場合もある。その人たちの立場からしたら、今バッキーが恩赦されてこうやって暮らしてることも不満かもしれない。


「ようやくこの時代で普通に暮らしていこうと思ったらスティーブは……なんて言うんだろうな…最期は今まで蔑ろにしていた自分の幸せのために……」


その先の言葉は続かなかった。
その代わりに、「超人血清の残りが出回ってるしで、平穏とはまた無縁になった」という言葉が出てきた。
その話なら少し見た。サムさんがテレビに出た時だ。わたしが知っているのは報道されていたものだから正しいこととか、真実は知らないけれど、あの騒動にバッキーも関わってたんだ…。


『……』


なんて言葉をかけたらいいんだろう。
話してくれてありがとう、でいいのだろうか。
スティーブさんがいなくなって、寂しい?それは聞かなくてもわかる。寂しいだろう。だって友達だし、戦友だし、ましてや唯一同じように超人血清とやらで強化された人間なのだから、他の誰よりも理解者であったはずだ。いや、正確には唯一では無いんだ。確かアレックスが最近博物館に展示が追加されて黒人の超人兵士のことも知れたと言っていたはず。


まとまらない頭でいろんなことに考えを巡らせていると「やっぱり受け入れられないよな」とバッキーが苦笑した。


『ううん、違うの。わたしにかけれる言葉はあるのかなって』

「…君は正直だよな」

『…それって褒めてる…?』

「ああ」


ソファーの背もたれと壁に頭を預けるようにして、バッキーがこちらを見る。


「大抵の奴は同情したりする。記憶がなかったんだから、洗脳されていたんだから仕方がないと。失われた時間は今から取り戻せばいいと」


長いまつ毛が伏せられる。




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