【MARVEL】This is my selfishness
第8章 8th
バタバタとサムさん達のお仲間であろう武装した人達が地下駐車場へと集まってくる。
レオポルドさんはあっという間に大人数に囲まれ、見えなくなった。
それでもバッキーは気にすることなく、わたしを抱き締めたままだ。
『バッキー、人が…』
「…無事で良かった」
抱き締められて、ちょうどわたしの耳がバッキーの胸あたりに押し付けられている。
ドッ、ドッ、とどちらの音か分からない心臓の音が聞こえる。
初めて人質になったわたしの心臓の音か。
それとも対峙していたバッキーのものか。
分からないけれど、温かさと一定のリズムでだんだんと自分の気持ちが落ち着いてくる気がする。
『…怪我、してない?』
そう言うと、ようやくバッキーは抱きしめる力を緩めてくれた。そのおかげで見上げて顔を見ることが出来た。
「それは俺の台詞だ。髪もこんなに荒れてるじゃないか」
バッキーの右手が優しく頬や荒れた髪を撫でる。
その表情は心配そうに、けれど安堵したようにも見える。
『わたしは大丈夫だよ。たくさん走っただけだから』
確かに乱暴な扱いは受けたけど、ぶたれたりした訳じゃない。多少色んなところにぶつかったせいでアザは出来てそうだけど。
「今すぐ救護班に診せよう」
キョロキョロと辺りを見渡すバッキーを制止する。
『今は…とりあえず、家に帰りたい、かな』
出来ることなら、と付け加えると「わかった」と言ってくれた。まだ無線は通じてるのか、その場でサムさんに向けて小さく「一旦ミアを連れて帰る」と言っていた。
「歩けるか?」
『うん』
返事をしたものの、1歩踏み出したところで違和感に気付いた。
それはわたしを支えてくれていたバッキーにも伝わったようで、わたしが見るよりも早くしゃがんでわたしの右足の踵を見た。
「靴擦れだな」
『うん…』
自分のじゃない履きなれない靴でずっと引っ張られるようにして走っていたから、ストラップ付きの靴でも靴擦れをしてもおかしくはない。
『大丈夫。右足はつま先で歩け───ぶァっ?!』
わたしが喋り終わる前に足が地面とさよならした。
『ば、バッキー?!』
「ちゃんと押さえてるから大丈夫だ」