第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
「変化の術で紛れ込んで、バレるまで少しずつ村人を外に逃がしていく?」
「バレたら?で、人質に取られたら?」
「人質かぁ…。」
人質って可能性を忘れてた。
もし影分身を使われたら単純に倍に計算しても十四人。三人四人と出されたら更に倍になる。
そうなったら制圧どころじゃない。
「となると、変化でってわけにもいかなくなりますね。」
「けど、悪くはないよ。」
うーん…。
こりゃ文殊の知恵を期待したい。
二人を見ると、どうやら回復したらしい。
「ねぇ、知恵貸して。人質を取られずに制圧するとしたらどうしたらいいと思う?」
そう声をかけたら、近くに寄ってくれた。
「…俺、思ったんだけどさ。忍崩れ共を外に誘き出せないかな?」
と、ユウは首を捻る。
「俺は塀の周りを調べられないかな、って思う。だって罠があるとは限らないだろ?だったら闇夜に乗じてそこから入ったっていいだろ。」
トウキはトウキで首を捻る。
でも、そうか。
何もあの囲いの中でケリを付けようとしなくていいんだよね。
外に誘き出すってんなら、塀の外の罠が逆に夜使えるかもしれないし。
無きゃないで無いで動きやすくもなるし。
しっかし、夏は暑いねぇ。
じっと立ってるだけでもじっとりとした空気に包まれて嫌な感じ。
こんな時は怪談話でもして…。
…あれ?
そういえば、この世界に怪談ってあったっけ?
話に出たことって一回もないし、その手の類の本も見たことない。
……。
んん〜?
使えるんじゃないか?これ。