第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
「今日で最後か。君には世話になりっぱなしだな。恩返しもする暇がなかった。」
私はそんな事はない、と首を振る。
「私にも利があるから手を貸したんです。全くの親切じゃない。」
「それでも何か返したくなるくらいには感謝し切りなんだ。」
スグルさんはそう言って少し困った様に笑った。
でもそうだな…。
「そこまで言ってくれるなら、一つだけ。」
私はうちはの未来を思い浮かべた。
「一日でも早くここを豊かに育ててください。私が後に続ける様に。」
スグルさん達の前例に、うちは一族もあやかりたいのです。
スグルさんは、当然何のことだか分からない。
分からないながらも、意図は何となく感じたみたいで苦笑する。
「分かった。一日でも早く基盤に乗せよう。」
そう言ってスグルさんは手を差し出した。
私はそれをしっかり握り返す。
そして、ぱっと離すとそのまま走り出した。
「さよなら〜!」
「あぁ、元気でな!」
私はそれに笑顔で応えると、振り返ることなく村を後にした。