第55章 暗闇でも見つけて
「でも、復讐したいと思ってしまう。あの女に----孤児院の院長に。あいつは……私に……」
言葉が続けられなくなり、ミラは唇を噛んだ。ドラコは横目でそれを見て、ほんの少しだけ表情を緩めた。
「復讐したいと思うくらい、酷いことをされたんだろ?」
「……うん」
「なら、復讐したくなるのは当然だ。誰だって思うさ。僕だって、ポッターが僕を馬鹿にするたび、呪いの一つや二つ撃ち込んでやりたいと思う」
「あなたが何もしなかったらハリーはそんなことしない」
「…例えばの話だ」
「スネイプがわざと大量の宿題を出した時は?」
「先生は僕たちのためを思って出してくださっているんだ」
「減らず口だね」
「それはお前もだ」
フッとミラは口元を緩めた。
「あーあ、ドラコに言いくるめられる日が来るなんて----明日は絶対にスネイプの宿題が大量に出されるな」
「僕のせいみたいに言うなよ。--もっとも、スネイプ先生ならやりかねないが」
「やっぱりそう思ってるじゃん」
「事実を言ったまでだ」
肩をすくめるドラコに、ミラは肩から力が抜けるのが分かった。ほんの少しだけだが、胸の中のざらつきが静かに溶けていく。
「さっきは…ありがとう」
「なんだ」
「またドラコに助けられたと思って」
小さな声だった。ドラコは眉を顰めた。
「またその話しか----僕は覚えていないと言っただろう」
「でも私も言った。私は覚えてるからって」
「…」
「わたし、あの時どうすればいいかわからなくなってた。でも、ドラコが来てくれたから、ネビルは傷付かずに済んだし----どうかしてたんだと思う」
「…そうだな。お前は熱くなると先のことを考えないバカだからな」
ミラはまだ包帯を巻いているドラコの右手を見たが、今は何も言うまいと思った。