第55章 暗闇でも見つけて
「ロングボトムの会話からして、それは分かっている」
どうやら会話はほとんど最初から聞かれていたのだと、ミラは気が付いた。
「----あなたも、私を止める気?」
「いいや、まさか。でも、お前がマグルに『磔の呪い』をかけたいとは思ってもいなかった」
「…誰だって、そうしたくなるよ」
ミラは暗い声で答えた。まだ手に持っている杖を力なく見つめると、ネビルの悲痛な顔を思い出した。
「何をされた」
「…言いたくない。でも、ドラコじゃ想像もつかないこと」
濁ったアメジストの瞳をしたミラは、あいまいな笑みを浮かべてドラコを見た。ドラコは眉間に少し皺を寄せていた。
「私は----闇の魔法使いになると思う?」
ドラコは、木陰の中にいたせいか、もともと冷えていた空気が更に下がったような気がした。ついさっきネビルを突き放していたのに、今は迷子の子供のように答えを求めているミラに、ドラコは無意識のうちに息を呑む。
(ロングボトムの記憶を消さなかった時点で決まっていただろ…なのにその答えを僕に投げるのか?)
ドラコは自然と口端が上がるのが分かった。
(多分、いや絶対、ポッターたちには見せない部分だ)
ミラがハリーに過保護なことをドラコは知っていた。だからこそ、ミラが絶対にハリーに仄暗い部分を見せたくないと思うのは自然なことだと、ドラコは確信した。