第35章 クリスマスとポリジュース薬
【ドラコ視点】
マルフォイ家のクリスマスは、それはもう完璧だ。
氷の彫像に、魔法の炎で光る暖炉、長いテーブルに並ぶ最高級の料理とワイン。贈り物は山ほど届くし、誰が来ても見栄えする。
だから、正直言って、ホグワーツのクリスマスパーティなんて期待してなかった。所詮は学校だし、教師が用意するもんだ。大したことはないだろうって。
----でも。
大広間に入るとき、少しだけ胸が高鳴ったのは、否定できない。天井には魔法の雪が静かに降ってて、光の飾りもそこそこ綺麗で----料理の匂いだって悪くなかった。
「まぁ……悪くないな」
僕はクラッブとゴイルを引き連れてスリザリンのテーブルについた。ふたりはいつも通り、料理のことしか考えてない。こっちは、もう少し冷静に周囲を見てる。
そこへ、グリフィンドールのやつらが入ってくるのが見えた。
ポッターが先頭かと思ったけど、すぐに目を引いたのは、もっと意外な人物だった。
(…誰だ、あれ)
一瞬、わからなかった。けど、見覚えのある顔。グローヴァーだ。いつものあいつと全然違ってた。それに、今年もウィーズリーの母親から送られてきたものを着ているようだが----あれは本当にグローヴァーか?制服のスカートですら仕方なく着ている感じがあったあのグローヴァーが。
黒いストッキングが足元をすっきり見せ、髪はきっちり束ねられいて----。
今日はなんか----変だ。いや、違う。変じゃない。なんていうか、その、らしくない。妙に女の子っぽい。いや、いやいや、別に、そういう意味じゃない。似合ってなくも…いや、違う。似合ってるか似合ってないかの話じゃない。
一言、からかってやろうとした。「またもらったのか?貧乏くさいの、よく似合うな」って----だが、嫌でも去年のことを思い出してしまった。
『こんな幸せなクリスマス、わたし、初めてだった…』
怒りのこもっていた目が段々と潤んでいくところを見ていた時、なんとも言えない気持ちと、ショックで動けなくなってしまった。僕はもう一度、グローヴァーを見た。彼女は楽しそうに笑っていた。本当に、幸せそうに。