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涼風の残響【鬼滅の刃】

第20章 強化訓練と育手


実弥が駆け付けてくれた日から三日経過した。
実弥は翌朝には帰路につき、風音は心做しか剣士たちから怯えられながら、小芭内には感謝されながら稽古と手合せの相手をしてもらった。

夜は小芭内に是非と言われた軟膏を、実弥が帳面に記してくれた通りに調合して沢山作った。

「伊黒さん、今ある材料で……作れるだけのお薬は作りました。あの……体に害のある薬草は含まれていませんが、どうか剣士の皆さんが悲しまない程度に……してあげて下さいね?私の呼び名が増えそうですし」

「案ずるな。然るべき時に然るべき量しか使っていない。だが感謝している、これで愚図共の稽古も捗るというものだ。呼び名も案ずる必要は無い、変なものを口に出そうものなら両まぶたに塗り込んでやろう」

悲しげに目尻を下げた風音に小芭内は素敵な素敵な笑顔を向けて、綺麗に髪を結い上げた頭を撫でてやる。
それは心地よくて嬉しいのだが、新たに増えているであろう呼び名が風音の頭をめぐって冷や汗が止まらない。

(変な呼び名が聞こえたんだよね……伊黒さんの後ろに整列してる剣士の皆さん、私を怯えた目で見てるような気もするし。えっと確か狂薬学……)

「柊木さん!柊木さんと一緒に稽古出来たの楽しかったです!未来を見せてもらえて貴重な経験も積めましたし……あの薬を夜な夜な作ってるって聞いた時は可愛らしい狂薬……ギャッ、いえ!柊木さんの柱稽古、楽しみにしています!」

……嬉しい言葉を向けてくれた剣士から悲鳴が上がった。
今は確認出来ないが、口を滑らせそうになった瞬間に小芭内の足が高速で動いていたので、恐らく……いや、間違いなく剣士の足を踏み付けたのだろう。

なんとも複雑な気持ちになる遣り取りを目の前に苦笑いを零した後、小芭内を始めとして剣士たちに深く頭を下げた。

「こちらこそ貴重なお時間をいただきありがとうございます!私もすごく楽しく有意義な時間でした。伊黒さんとはまた手合せで、皆さんとは実弥君や私とのお稽古でお世話になります。会える日を楽しみにしていますね」

変な呼び名の前に一応嬉しい一言が付け加えられていた。
その一言に恥じぬ笑顔で風音が顔を上げると、それに応えるように皆の顔も笑顔で満たされていた。
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