第6章 【第四講 後半】マヨネーズは万能食だけど恋の病には効きません
「○○殿の声援のおかげだ。礼を言う」
ベンチに戻った桂は○○の手を取る。
九回表。茂野は最後の打者を打ち取った。
打ち上げられたフライをしっかりと捕球したのは、センターの桂だった。
「きっと、○○殿の魂が俺に乗り移っていたんだな」
上空に打ち上げられた球の落下点を予測するのは意外と難しい。
それでも桂はきっちりと捕えた。
投手としてグラウンドに立つことを希望しながらも果たされなかった○○の魂が力をくれた、と桂は言う。
「勝手に殺さないでくれる?」
○○は桂の手を振り払うと、氷嚢を取り換えにベンチの裏へと向かった。
土方の肩に氷嚢を乗せる○○を見て、桂が目を剥く。
「ナゼ、○○殿が氷嚢の用意を?」
「肩壊してんだから動かしちゃマズいでしょ」
桂は左肩に手を乗せ、苦痛に顔を歪めた。
「いてててて! どうやら俺も肩を壊したらしい。あ、間違えた、こっち!」
左肩から右肩へと手を入れ替える。
その時点で嘘をついていることはバレバレである。
「○○殿、俺にもアイシングを」
○○は白けた目を向ける。
「いつどこでどう肩を壊した?」
「さっきからヤケに肩が重くてな。きっと何かが取り憑いているんだ」
「それ私か? 私の魂が重いって言ってんのか?」
そうこうしている間に試合は九回裏。
銀魂高校最後の攻撃を迎える。