第6章 【第四講 後半】マヨネーズは万能食だけど恋の病には効きません

　九回裏は七番、桂からの攻撃。
　肩を壊したと宣言していた桂は見事なヒットで出塁し、○○に向かって右手を天高く突き上げた。
　○○にいい所を見せようと張り切る桂は、自分でついた嘘をすっかり忘れているようだ。

　続く妙は三振となり、ワンナウト一塁。
　ここで銀八が動いた。

「代打、○○！」
「へ？」

　自分の出番はないと思い込んでいた○○は、間の抜けた表情を見せる。

「ピッチャーとしては出さねーが、バッターとしても出さねーとは言ってねェ」

　銀八は○○に抱えていたものを投げて寄越した。

「お前のユニフォームだ」

　それは野球部のユニフォームだった。

「チアじゃなくなるのは心外だが、ここはお前の力が必要だ」
「私のユニフォーム、最初からあったんですか？」

　○○はチアユニの上から野球部のユニフォームを着込む。
　バットを選び、素振りをする。出来れば竹刀で打ちたいが、審判に止められてしまうだろう。
　深呼吸をする。今までチアとして踊っていた。体は温まっている。

「□□」

　背後から声をかけられ、振り返る。

「頼むぞ」
「任しといて」

　土方の応援を受け、○○はバッターボックスへと向かった。