第6章 【第四講 後半】マヨネーズは万能食だけど恋の病には効きません
九回表。集英高校最後の攻撃。
延長戦はないため、ここを抑えきれば銀魂高校の負けはなくなる。
「L・O・V・E! ギ・ン・タ・マ!!」
投球を許されなかった○○は応援で援護するしか道がない。
土方は振りかぶる。バッドに当たった球は点々と地面を転がり、土方の目の前へと転がった。
捕球すると土方はすぐに一塁へと送球した。
「よっし!」
「一人目、アウト!」
沸き立つ銀魂高校ベンチ。
だが、○○は唇を噛んだ。自分が出ていれば……
そんなことを考えても詮無い事。
気を取り直して声援を送る。
「S・H・I・N・E! ヒ・ジ・カ・タ!!」
ベンチからの声に土方は舌打ちをする。
SHINE。シネ土方。練習初日、沖田が悪乗りで発していた言葉だ。
自分が出られなかった腹いせだろうが、この場面でのこの言葉は洒落にならない。
(ッ……)
土方の肩は死にかけていた。
ここまで百五十球近い球を投げている。
九回表。ワンナウト。あと二人、どうにか持ちこたえてくれ。
土方は第一球を振りかぶる。肩に激痛が走る。
打たれた球は一塁側へと飛んでいく。
「ボール」
腕を上げ審判が宣言する。危なかった。
ボール、ボール、ストライク。二人目がなかなか打ち取れず、投球数が増えて行く。
そして五球目。ライナー性のヒットを打たれ、球は懸命に伸ばした土方の手をすり抜ける。
だが、土方の後ろで構えていたショートの沖田がナイスな守備を見せて一塁に送球。
ツーアウト、ランナーなし。あと一人打ち取れば守り切れる。
「いいぞ! いいぞ! 沖田!!」
沖田の好守を讃える○○だが、その顔色は曇る。
土方に目を向け、○○は顔をしかめる。二人目に球数をかけ過ぎた。
続く打者にはセンター前ヒットを打たれ、その次の打者にはフォアボール。ツーアウト、一塁二塁となってしまう。
「あと一人なのに……」
一人打ち取ることが至難の業だ。
ポンポンを振り上げ、○○は精一杯の声援を――上げる前に、土方がタイムを要求した。