第11章 【第七講 後半】酸いも甘いも苦いも辛いも青春の一ページ
某寺で荘厳な気分に浸り、某市場で食文化に触れ、○○達は宿泊先のホテルへと戻った。
桂の気ままな振る舞いで遅れ気味になったが、概ね土方が組んだ通りに班行動は進んだ。
修学旅行二日目も残り時間はわずか。
銀魂高校3Z一行は、某寺のライトアップを見るために高台へと移動していた。
○○はベンチに座り、幻想的な光を眺めていた。
旅は心を洗い、気持ちを開放的にする。
京の宵 夢見心地で いとおかし。詠み人、○○。意味不明。
○○の後ろには、○○以上に旅に心を解放された男が立っていた。
自身の気持ちを確かめるように、○○の後頭部を食い入るように見つめている。
○○への想いを自認したのは、昨夜のこと。
初めから気になる存在ではあったが、悪い心証しかなかった。
○○のことを知るにつれて悪印象は溶解し、自分でも気づかぬうちに恋心すら抱いていた。
土方は拳を握る。
○○の周囲に珍しく人がいない。
近藤は妙を追い回し、山崎は腰痛(昨夜階段から落ちた時に痛めた箇所が荷物持ちによって再発)でバスの中から夜景を見ている。
何かと邪魔をしてくる沖田も、修学旅行の夜にまで土方に構う気にならないのか、姿が見えない。
そして、一番の厄介者。
桂は迷子になったとかで未だ帰って来ず、○○は完全にフリーの状態だ。
チャンスだとばかりに、土方は拳を握っていた。
修学旅行の三日目、明日は終日自由散策だ。
誰が誰と行動をしても、どこに行くのも自由。
誘うなら、今しかない。