第11章 【第七講 後半】酸いも甘いも苦いも辛いも青春の一ページ
「あ、山崎」
桂を置き去りにした○○、近藤、土方、沖田は平穏を手に入れた。
寺へと向かっている途中で、本来ならば共に行動しているはずだった男と遭遇した。
「○○さん!」
○○の声を聞きつけた山崎は、悲哀に満ちた声を漏らした。
「そっちはお土産屋さん回ってるんだね」
「見ての通りです」
彼は大荷物を抱えていた。
両腕に複数の紙袋を下げ、両手には箱が積み上げられている。
箱に隠れ、顔も半分以上が見えていない。
「山崎の班員達は……ああ、いた」
近くの土産屋の軒先に、彼女達の姿はあった。
「コレ、かーわーいーいー!!」
クラスメイトの女子四人のうちの一人、ハム子の声が○○の耳に届く。
山崎の班員は阿音と百音の双子、それにキャサリン、ハム子という我が強すぎるメンバーだった。
桂がこの班に入っていたら、きっと初めからバックレていただろう。
「ちょっと、荷物持ち! 何してんのよ!」
「オマエノ辞書ニ自由トイウ言葉ガアルト思ウナ!」
「勝手にフラついてんじゃないわよ!」
「ピッピッピー!」
「誰が荷物持ちだ!! お前達に指図される覚えはない!!」
律儀な山崎は行動を共にし、案の定、パシリとして使われていた。
「それじゃ、○○さん、観光を楽しんで下さい」
ペコリと頭を下げ、山崎はギャル達の中へと混じって行った。
「真面目だねェ、山崎は」
感心するような呆れるような、曖昧な声音で○○は呟く。