第11章 【第七講 後半】酸いも甘いも苦いも辛いも青春の一ページ
「勝手な行動すんな!」
「○○殿、俺にも一口!」
同時に、まるで違うことを土方と桂は口走る。
「このメンバーでまとまるわけがないんだから、個人行動にしようよ。何よ、一口って」
抹茶パンケーキを頬張り、○○は心底満足気な表情を浮かべる。
美味。非常に美味。
「二人の言い争いに付き合ってたら、日が暮れる」
○○の正論を前に、土方と桂はぐうの音も出ない。
白玉団子を口に放り込む○○の姿を見た桂は、あることを思いついた。
「確かに、○○殿の言う通りだ。ここからは各自、思うままに行動をするとしよう」
桂は手を上げ、店員を呼んだ。
「すいません。俺にも○○殿と同じものを」
桂は○○の隣に腰を下ろした。
「貴様は寺が先なのだろう?」
桂は唇の端を上げ、土方に対し勝ち誇ったような笑みを見せる。
散々、寺の拝観時間を言い募っていた土方だ。これで、別行動をせざるを得ないはず。
「俺は○○殿と食事を楽しんでから、観光に向かうとしよう」
○○は一瞬、咀嚼を止めた。
横には微笑を浮かべる桂が座っている。
○○は再び手と口を動かした。
美味なパンケーキを堪能することを諦め、喉にくっ付くことも厭わず口内へと放り込む。
水で流し込み、瞬く間に完食。
「ご馳走様でした。桂くん、どいて」
○○は桂を突き飛ばし、席から抜け出した。
「○○殿!?」
時を同じくして、桂が注文したパンケーキが運ばれてきた。
「桂くんは食事を楽しんでから、観光に向かって」
「○○殿ッ……!!」
「残したら殺すから」
釘を刺し、○○は店の外へと向かった。
残された桂は皿の上で重なっているパンケーキを見て、肩を震わせる。
「五枚はキツい……!」
桂の苦悶の声を背後に聞き、土方は勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。