第10章 【第七講 前半】修学旅行のハプニングはベタ中のベタでよし
「鬼の副委員長が聞いて呆れるよ」
「てめーも同じだろーが。3Zイチの優等生とか言われてっけど、禁破って男の部屋に……」
土方は○○に目を向ける。
「男の部屋……」
○○は男子の部屋に一人でノコノコやって来た。
そして現在は、部屋には土方と○○の二人きりだ。
(ふっ、ふたりィィィィィ!!!)
マヨネーズに気を取られて、二人きりで部屋にいるという状況に気づいていなかった。
それも、○○が座っている場所は布団の上。
妙に心臓が脈を打つ。
「オ、オイ、そろそろ足治っただろ。とっとと部屋に戻れ」
「え? まだ数分しか経ってないんだけど」
「また担任が覗きに来るかもしんねーだろ。見つかる前に、とっとと帰れ」
「わかったよ」
土方の言うことにも一理ある。
枕投げフェスタを終えた今、長居は無用。
「土方くん、肩かして」
「何言ってんだ! 一人で歩けんだろ!!」
「歩けることは歩けそうだけど、立ち上がれないんだよ」
歩くよりも、立ち上がる方が足首に負荷がかかる。
カモンカモンと、○○は手招きをする。
「チッ」
土方は舌を打ち、○○の隣に腰を下ろす。
○○は土方の肩に手をかけ、体重をかける。
「ゆっくり立ち上がってよ」
「わーってるよ。指図すんな」
既に風呂に入ったあとなのか、○○の髪からは洗い立てのシャンプーの匂いがする。
鼓動が早鐘を打つ。原因不明の動悸。いや、なんとなく、原因は理解している。
だが、認めたくはない。
「そっとね、そーっと」
そーっと、土方と○○が立ち上がっている最中、そーっと襖が開かれた。