第10章 【第七講 前半】修学旅行のハプニングはベタ中のベタでよし
見えた顔は、風呂に行ったはずの山崎だった。
「パンツ持ってくの忘れちゃい……」
二人を見て、山崎は目を剥く。
目に映ったのは、寄り添う○○と土方。
とんでもない現場に立ち入ってしまった。
「おおおっ、お邪魔しました!!」
不純異性交遊を行っていると早とちりした山崎は、手早くパンツを掴み、部屋から駆け出る。
「おい! 何、勘違いしてんだ!!」
「あっ、ちょっと!」
慌てて土方が体を離すと、○○はバランスを崩した。
転倒を回避しようと、○○は両手で土方の肩にのしかかる。
「おわ!」
回避するつもりが、○○は見事に転倒。
さらには体重をかけられた土方までも転倒。
「…………」
「…………」
仰向けに倒れた○○の上に、土方が覆い被さっている状況。
数センチの距離で見つめ合う、土方と○○。
これぞベタ中のベタの修学旅行ハプニング。
ごくり、と土方は唾を飲む。
認めたくはない。が、認めざるを得ない。胸の高鳴りは目の前の女によるもの。
何かと突っかかって来て鬱陶しいと思っていた女のはずだったのに。
「□□……」
「マヨネーズくせェェ!!」
名をつぶやかれた瞬間、○○は覆い被さっていた体を力一杯、突き飛ばした。
至近距離で吐き出された土方の息は、マヨネーズ臭かった。
吹っ飛ばされた土方は壁に衝突。
「何、遊んでんですかィ、土方さん」
沖田の目の前を土方は飛来して行った。
早くも沖田は見廻りをサボり、部屋へと戻って来た。
「ちょうどいいや。山崎が階段から落ちたみたいなんですけど、どうしやす? とりあえず放置しときやしたけど。パンツは拾ってきやした」
沖田は山崎のパンツを掲げながら、背後に○○がいることに気がついた。
布団の上で上半身を起こした○○が、息を切らせて土方を睨んでいる。
沖田は土方に向け、心底軽蔑の眼差しを向ける。
「土方さん、アンタまさか、押し倒したんですかィ?」
足を負傷して動けない女を手籠めにしようとしたが、反撃にあって投げ飛ばされた。
沖田にはその様に見えた。
「ちげぇ……」
したたかに背中を打ち付けた土方は、バタリと畳に倒れ伏す。
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